3個のチョコレート
榊原(葉っぱ)です。
私が子どもの頃、読んだ本で大泣きした本が2冊ある。
『ないたあかおに』と『ごんきつね』だ。
優しい心が理解されなかったことが悲しくて、涙が止まらなかった。
小学校の頃、母は仕事をしていて、台所のテーブルにおやつが置いてあるのが常だった。
ある日、学校から帰ると、どら焼きが3個テーブルに置いてあった。
今日のおやつだ。
私は3個あるので、後で妹と分けようと1個食べて2個残しておいた。
その2個を後から帰ってきた妹が全部食べてしまったのだ。
そのことを知ると、私はわぁわぁ泣き叫び母に訴えた。
当然、妹が叱られると思っていたのだ。
ところが、母が「あんたが悪い」と言った。
そんなに食べたければさっさと食べちゃえばいい、もう、わぁわぁ泣いてうるさい・・・
とかいうことを言った。
そして、ぐずだから、とも言った。
要領の悪い性格だというのは、何度も言われた。
私は今後どら焼きが3個あったら、3個全部絶対に食べてやろうと思ったのだった。
昔の話だけど、私は忘れられないでいた。
先日、孫が私の読み聞かせボランティアについてきて、ボランティア仲間から金色の紙
に包んである小さなチョコを3個もらった。
家に帰ってきて、孫は自分に1個。私に1個くれた。
「あれ、1個余っちゃたね。」と孫。
「○○ちゃん、食べていいよ。○○ちゃんがもらったんだから。」と私。
数日後、仏壇に手を合わせていて、仏壇の奥の方に金色に光るものをみつけた。
「ん、インゴット」と思ったが、すぐに孫がお供えしたんだとわかった。
孫の心が私は嬉しかった。
「じじにあげたんだね。」
奪い合うよりも人と分け合うことの方がいい。
私はその日一日中幸せで、その話を何人かの友人に話した。
本当にうれしかったのだ。
どら焼き事件も忘れられる気がした。