五感を使って育てる

Bucchi(11期)です。

外出自粛と関連して、外国でヒヨコを飼育し始めた人が増えたという話がありました。私は動物を飼育したことはないですし、植物は枯らしてしまう自信があるので、家に置いたことはないのですが、4年前にパン作りを始め、そのタイミングで“自家製酵母”を育てることを始めました。

4年の間で、全くうまくいかなくなった期間があるので、ずっと続けているわけではないのですが、たまたま、今年になってから同僚と一緒にやってみようと思い立ち、レーズン酵母を作っていました。今の巣ごもりは、わたしが自家製酵母でパンを焼くにはちょうどいい時間になっています。

酵母を作ることを「酵母起こし」というのですが、なぜ「育てる」こととつながるかというと、時間、日が経つにつれてシュワシュワ、ブクブクと、同僚曰く、まさに「息をしてる」という感じだからです。

うまく起こせた酵母からできるパン生地も、時間をかけてモコモコ、フワフワと育ち、焼き上げると、しっとり、もちもちとドライイーストで焼いたパンとは風味が違います。

酵母を起こしてからパンを焼き上げるまでにかかる時間は…酵母起こしに約6日、一晩冷蔵庫で休ませてから、中種(フワフワのパンを作るには必要)を育てるのに3日、また冷蔵庫で休ませて、やっとパン生地作りです。パン生地の1回目の発酵に半日近く、その後、休ませたり、形を作ったりして、やっと2回目の発酵を数時間終えたら、焼き上げです。ここまでの日数を数えると…約10日ですね!!

例えば、ドライイーストだと仕込みから焼き上げまでだいたい3時間程度。

どうりで私には、時間のある今が適しているわけです。

酵母を起こすのに必要な材料は、食材と水と砂糖。食材は基本と言われるのがレーズン(干しブドウ)ですが、ドライフルーツでなくてもできます。わたしはイチゴとこしあんを作った時に出る、小豆の皮から起こしたこともあります。それぞれ風味が違います。ところが、わたしの好きなイチジクは、たんぱく質分解酵素を持っているので、酵母はできてもパンには向いていないそうです。ここは科学ですね。

パンの発酵には過発酵に注意と言われます。酵母起こしで欲張っても同じ状態になります。うまく育てた酵母液はちょっと渋みがあります。

自家製酵母パンを作ってみて、いつも思うのは、五感を使うといいんだということです。これは、(残念ながら)一般のパン教室では教えてもらってません。

シュワシュワ、ブクブクの様子を観て、聞いて、香りが変わって行く様子を嗅いで、少し味見もしたり、最後にはパン生地を触ってと五感のフル活用です。

最期に冒頭で「全くうまくいかなかった期間」があったと書きました。原因は多分、納豆。納豆菌強しです。過発酵で酸っぱくなるのは乳酸菌が発生したせいでしょうか。一口に発酵と言っても奥が深すぎます。

※写真は左から1.5斤パン、お皿の上はコッペパンとロールパン