夫の読書
榊原(葉っぱ)です。
三年前の今頃、抗がん剤の治療をやめると決めて、仕事も辞めた夫は、家でずっと本を読んでいた。こんなに読書家だったかなと思うほど、何かにとりつかれたように読んでいた。
余命いくばくも無いと知った人が読みそうな本ではなかった。歴史小説だったり、ミステリーだったり。私とは好きなジャンルが違うので、私は読んでみたいとも思わなかった。
時折、夫が「これ面白かったよ。読んでみて。」と読み終えた本を勧めてくるのだが、私は「こういうのあまり好きじゃない。」と言って断ったり、ちょっとだけ読んで「あまり面白くない。」とか言ったりしていた。
三回忌を終えた頃、夫のベッドの横の棚に積まれている本が妙に気になった。
一冊読んでみた。面白かった。
あれからもう一冊、もう一冊と読んでいるが、どれも面白い。今まで読んでこなかった本だから新鮮なのかな。
お空の上で夫が「そうれみろ。面白いだろ。」と言っている。
先日、がんで夫を亡くした友と会った。
私の夫はがんと告知されても取り乱したりせず、ずっと淡々としていた。友の夫もそうだった。
エピソードも笑い話になり、友は「何も飲んだり食べたりできなくなったのに、お酒だけは飲めた。」と言い、私は「モルヒネのことをマリファナと言っていた。」と笑いあった。
ノートに「65歳の短い人生だったが、お母さんと生きてすごく楽しかったです。お母さん本当にありがとう。(原文のまま)」って書いてあったよと友に話すと、友はぽろぽろと涙をこぼして「いいなぁ。うちは何も言わずに逝っちゃった。」と言った。