あきらめないで
清水です。
主人の母は10年以上前からアルツハイマー型の認知症である。
今は老人ホームで暮らしている。
それは2年前、主人の兄が無断欠勤しているという電話から始まった。
結局実家で突然死しているお兄さんが見つかった。
何の前触れもなく1人で逝ってしまった。
その頃のお母さんは1人で置いておくことができない状態で、
週末お兄さんが一緒にいられる時だけ実家で過ごし、
平日は昼はデイサービス、夜はお泊りで施設にお世話になっていた。
息子が3人いるのだが名前と顔が一致するのはお兄さんだけで、
話しぶりから時折夫と間違っている節も見受けられた。
お母さんにお兄さんの死を伝えるべきか、家族は迷った。
はたしてお兄さんの「死」が理解できるのか。
理解できなければそれはそれなのだが、
分かった時に、ずーっと悲しむことにならないか。
ショックでパニックになって大変なことにならないか。
すべてが終わってからお参りのみにするべきか。
お通夜までの3日間、家族は結論を出せずにいた。
そんな思いを施設の責任者に伝えたところ、
「ご家族の意思を優先してください。
たとえその後パニックになっても私たちが責任を持って対応しますから」と
言ってくださった。
施設の方の言葉に後押しされ、
変な言い方だがお兄さんがお兄さんの形をしているうちに
お母さんにお別れをしてもらうことに決め、
お通夜前の落ち着いた時に施設の方に送り迎えをお願いした。
遺影を見た瞬間にお母さんは「よっちゃん!!!」と言い、
「いつだね?急だったんかね?なんでこんなことに・・」と、
棺にすがって泣き出した。
分かったことに戸惑う家族。
手短にお参りを済ませ、お母さんは泣きながら施設に戻った。
みんながお母さんがどうなってしまうのか不安だった。
しばらくして施設に電話を入れると、
「しばらく泣いていましたが、今は落ち着いていつも通りですよ」。
一同安心した。
現在にいたるまでお兄さんが亡くなったことが
お母さんの口から出ることはない。
お礼に施設に伺った時、施設の方が
「お母さんが認知症になったのは、こうなることがわかっていた神様が、
お母さんが悲しまないようにしてくれたのかもしれませんね」とおっしゃった。
本当にそうなのかもしれない。
言ってもわからないだろうと勝手に思うことがある。
でも本当はそうじゃないんだな。
会いに行くと最高の笑顔で迎えてくれるお母さんに、
もっともっと話しかけてあげなきゃ。
(たとえ私が次男の嫁だとわかっていなくても)
早いもので昨日3回忌を終えた。
お兄さん、お母さんのことをしっかり見守ってください。