『わたしとトムおじさん』
ムーランです。
表記は少し前に読んだ、小路幸也氏の作品である。
小路氏の作品では、以前にここで紹介した『空へ向かう花』が一番だと思っているのだが、
それに続く良い作品だった。
『空へ向かう花』と同じように子どもが主人公なのだが、他人と関わることが少し苦手なおじさんと生きていく中で、成長する姿を描いている。
周りを固める大人たちがまたいい。これも『空へ向かう花』に共通している。
トムおじさんは、人と関わるのが苦手な青年なのだが、常にまっすぐで、
自分のできることをきちんと把握していて、それを精いっぱいに発揮していく。
また、彼に関わる人々も彼のあるがままを受け入れ、認めている。
この小説は決して押しつけではなく、さりげなく人が人のことを気遣い思いやることの大切さを語っている。
解説に書かれてあった。
「小路幸也氏の子供が主人公の作品には、祈りが込められている」と。
彼の作品には様々な事情を抱えた子供が登場するものがいくつかあるのだが、
確かにどれも全て健気に頑張る姿が好意的に描かれていて、
「どうにか幸せになってほしい」と言う祈りが込められている気がする。
小路幸也氏は非常に多くの作品を書いている。
ちょっと変わった設定の作品もあるのだが、どれも読みやすく、そして温かい。
とっかかりは『東京バンドワゴン』シリーズがお薦め。