棒鱈

ここ数年、おせちを作るようになった
黒豆、田作り、棒鱈…
種類は多くないし、昆布巻きとくわいは残るので作らない

以前は年末年始に家族そろって実家に出かけ、母が作ったおせちを、みんなで一緒に食べるのが恒例だった
おせちを作るようになったきっかけは4年前の母の入院
12月の初めから正月の一時帰宅をはさんで約1か月半の入院
当然、母は年末に台所に立つことも、正月の準備を采配することもできず過ごした
その年は取り寄せのおせちが2つあったので、それで一時帰宅の時に家族がそろって会食をした
それまでも黒豆は煮ていたので「物足りなさ」は感じずにいたが、それでも母はいつもの棒鱈煮がないと残念がっていた

もともと家業が乾物屋で、商売をしていたころは12月に入るとお客さんが買った「棒鱈を戻す」ために、青いペール何本もの(干した)棒鱈が水に入れられ、毎日その水を入れ替えるのを見ていた
とにかく何とも言えない独特の臭いがあり嫌いだった

母はコトコトと何時間もストーブに大鍋をかけて棒鱈を煮ていたが、当然似ている最中も戻しているときほどではないが独特の臭いはあり、好きではなかった
わたしが結婚して、家を出ても棒鱈だけは欠かさずおせちに並んでいたのは、母が好きだからだというのはつい最近になって聞かされたことだった
なぜか、わたしの三女は棒鱈煮が好きで、正月になると母の炊いたものをおいしいと言って食べていた
母が炊かなくなったのを機に、作ってみようと思い、WEBで下ごしらえの仕方を探し、味付けは自分の舌を頼りにして作り始めた
まさか自分が干した棒鱈を買って、戻して、煮ることになるとは思ってもみなかった
でも、不思議と当時は「臭い」と思っていた臭いはほんのり懐かしく、炊いているときの臭いからもストーブの上にかけられた大鍋を思い出す

昨年は骨が硬くて食べられなかったのが悔しく、今年はしっかり下茹でをして、スーパーで買って水戻しを始めて10日余り、火にかけてから都合2日がかりで炊き上がった
棒鱈煮の好きな三女はすでに一人暮らしをしているし、明日は、実家に届けに行こうと思っている
「よう炊けてるがね」と言ってくれるだろうが、果たして自分は満足できるだろうか